オリンポス十二神の更に上を見る
オリンポス12神の誕生について書いたが、続いて、さらにその上の世代の話をしたいと思う。
つまり、ゼウスの父親にあたる大地・農耕の神クロノスや、その妻大地の女神レア達の誕生の神話、更にはその上の世代の誕生の神話だ。
クロノスの父親は、アフロディーテについて書いた所でも触れた通り、空の神ウラノスである。
また、母親は、大地の女神ガイアだ。
オリンポス十二神の誕生(神話の誕生ではなく、神話内における誕生)以前には、ティターン十二神と呼ばれる神々が存在していた。
彼らはバルカン半島の地においてゼウス信仰が生まれる前の、古い時代の自然神と考えられている。
(この十二神の子孫たちも広義の意味に置いては、ティターン神族に含まれるが、今は取り上げない。)
その十二神とは、オケアノス、コイオス、クレイオス、ヒュペリオン、イアペトス、テイア、レア、テミス、ムネモシュネ、ポイべー、テテュス、そしてクロノスである。
では、何故、彼らが、父親のウラノスから天地の支配権を奪ったのか。
それは以下のような伝説に由来する。
大地の女神ガイアと空の神ウラノスは交わり多くの子供を為した。
その中で、1つ目を持つキュプロクス族や、100の手と50の頭を持つヘカントケイル族が産まれた。
ウラノスは彼らの容姿が醜かった為に嫌い、タルタロスという奈落に閉じ込めた。
これに腹を立てたガイアは、息子のウラノスに鎌を渡し、そして命じた。
「ウラノスの男根を切りなさい。」
クロノスは命ぜられるがままにクロノスの男根を切り、そして海に投げ込んた。この投げ込んだ際の泡から産まれたとされる説もあるのが、前述の通り、アフロディーテである。
また、この時ウラノスがクロノスに伝えたのが、あの「クロノスは自分の子供に殺される」という予言だ。このようにして、ティターン神族はウラノスから天地の支配権を奪ったのである。
ここからはティターン12神について個別に説明していく。全員、父親はウラノス、母親はガイアである。
まずは、オケアノス。
ギリシアの世界観においては、世界は円盤状になっており、大陸の周りは海(外洋)に囲まれていた。
この外洋を流れる海流をオケアノスと言り、この海流を神格化した神がオケアノスである。
謀略を嫌う性格とされ、クロノスがウーラノスから王位を奪った時でさえ、謀議に加わらなかったという。
また、ティターン神族とオリンポスの神々との戦いの際、娘のステュクスに対して、ゼウス側につくように勧めたという。
その功績により、ステュクスは「神を罰する」という特殊な権限がゼウスより与えられた。
なお、英語のoceanはオケアノスに由来する。
続いてコイオス。
彼はほとんど系譜上の存在であり、伝説などは特に残っていない。
ティターン神族のポイべーを妻とし、レト、アステリア姉妹を為した。
この姉妹はいずれもゼウスからの求愛を受け、レトはアポロンとアルテミスの兄妹を産んでいる。
アステリアはゼウスから逃れようとして、ウズラに姿を変え、海に身を投げた。
そこから島が生まれ、オルテュギアー島と名付けられた。
ちなみにアステリアの子供には女神ヘカテーがいる。
続いてクレイオス。
彼も系譜上の存在であり、ほとんど伝説は残っていない。ガイアとポントスの娘である海の女神エウリュビアーを妻とした。
子供にはアストライオスやペルセースなどがいる。
ヒュペリオンは太陽神とされ、テイアとの間に、ヘリオス、セレネ、エーオースがいる。彼は人々に天体の運行と季節の移り変わりを教えたとされている。
イアペトスはオリンポスの神々との戦いの際にはオリンポスの神々に敵対し、激しく戦った。敗北したため、タルタロス(冥界の更に下、奈落)に閉じ込められている。
彼の息子には、アトラス、メノイティオス、プロメテウス、エピメテウスがいる。
プロメテウスは人類に火を与えたことで有名であり、エピメテウスは箱を携えてやって来た美女パンドラと結婚したことで有名である。
この後パンドラは持ってきた箱を開けてしまう。
テイアは前述の通りヒュペリオンの妻であり、ヘリオス、セレネ、エーオース達の母親である。
レアはクロノスとの間にゼウス達をもうけた。
オリンポスの神々との戦いの際にはオリンポス12神であるヘラを守るために、彼女をオケアノスとテテュスの夫婦に預けた。
その後もレトの出産(アポロンとアルテミスの誕生)に立ち会ったり、ハデスがデメテルの娘ペルセポネをさらった際の調停を行ったり、ヘラに迫害されたデュオニュソスを助けたりしている。
テミスは掟、法の女神である。
また、オリンポスの神々との戦いの前後で唯一その地位を保った神である。
彼女はゼウスの二番の妻になり、エウノミア(秩序)、ディケー(正義)、エイレーネ(平和)の三姉妹、また、ギリシャ神話において、人の寿命や死を司る運命の三女神をもうけた。
また、アポロンに予言の術を教えたとされている。
ムネモシュネは記憶の女神とされる。
彼女はゼウスとの間に九人のミューズ(文芸の女神)をなした。
このミューズは英語のmusicやmuseumの語源であるとされている。
また、彼女は名前を付けることを始めたとされる。
ポイべーはレト、アステリア姉妹の母親である。
つまり、アポロンとアルテミスの祖母に当たる。
一説では、かつてデルフォイの神託の支配者の1人で、その地位を後に孫のアポロンに譲ったとされている。
テテュスはオケアノスの妻である。
しかし、オケアノスと喧嘩をして以来、離れて暮らしているとされている。
子供には3000の河神の息子と3000の海や湖、地下水の女神がいる。
そして、クロノス。
彼は万物を切り裂くアダマスの鎌を得物としている。
父ウラノスの性器を切り取った鎌である。
彼は自分の子供に権力を奪われるのを恐れ、産まれてきた子供を次々に食べていった。
しかし、隠して育てられていた末子のゼウスに倒されてしまう。
ちなみに彼は愛人のニンフ(ギリシャ神話における精霊)との間にかの有名な半人半馬の賢者ケイローンをもうけたとされている。
続いて、ウラノスやガイアについても説明したいと思う。
天空の神ウラノスはガイアから産まれたとされる。
つまり後に彼は母親を妻としたのである。
彼は全宇宙を統べた最初の神とされており、巨大な体躯を持っている。
また、夜が暗くなるのは彼がガイアと交わるために、夜の女神ニュクスを引き連れて大地に近付くためとされる。
では、そのガイアはどこから生まれたのか。
それは全ての始まりの神であるカオスより生まれた。
それは概念的なものであり、天地創造前の混沌とした状態のものである。
このカオスは世界の始まりに存在したため、このモノがギリシャ神話の始まりである。
以上がギリシャ神話の系譜、その誕生の物語です。
これを読んでギリシャ神話に興味を持っていただけたら幸いです。
ギリシャ神話で最も有名なオリンパス十二神についてはこちらをご覧下さい